最大積載量は積めない理由【特殊車両通行許可】

最大積載量は積めない理由【特殊車両通行許可】

東京都武蔵村山市の特車申請屋さん(運営:紺野行政書士事務所)です。

先日、トレーラーの特殊車両通行許可申請をしており、最大積載量ですと許可されても夜間限定通行の条件が付くため、お客様にご相談の上、24時間走れるように減トンして申請しました。
実は、特殊車両通行許可では、最大積載量を積めないことも少なくありません。
車両と経路によっては、許可がおりるようにやむを得ず、または、許可に付される条件をゆるくするために戦略的に減トンして申請することはよくあるのが実情です。

特殊車両通行許可に馴染みがない方は、当然のようにトラックの後方に記載ある最大積載量が積めるという認識をお持ちの方もおられると思います。

この記事では、特殊車両通行許可で車検証に記載の最大積載量が積めない理由について、専門の行政書士が経験に基づいて、わかりやすく解説します。
この記事を読むと、普段あまり気にしない最大積載量についての知識が深まるでしょう。

特殊車両とは?

特殊車両とは、一般の道路を通行するために特別な許可が必要な大型や重量の車両を指します。

特殊車両を通行させるときは、道路管理者の許可を受けるように、道路法で定められており、この許可のことを特殊車両通行許可といいます。
特殊車両は原則、道路を走ることは禁止されているため、それを例外的に解除するための許可となります。

この申請には、多くの書類や手続きが必要ですが、企業が特殊車両を安全かつ法的に運行するためには、この許可は欠かせません。


特殊車両通行許可について詳しい解説はこちら▼
全体像がわかる!特殊車両通行許可の申請から許可までの流れをわかりやすく解説

車両スペックの限界と許可される限界は異なる

車検証記載の最大積載量はその車両のスペック的に積める限界値です。
しかし、特殊車両通行許可における最大積載量は、荷物を積んだ状態の車両と経路の組み合わせで許可される最大積載量です。

車検証をよく見てみると、特殊車両通行許可を得る場合には車検証記載の最大積載量が積めない場合があるということが書いてあったりします。
特殊車両を扱う方は確認してみてください。

車検証に記載の最大積載量とは

その車両がスペック的に積載できる量の限界値です。

4tトラックなどの特殊車両に該当しないような車両は、この最大積載量を積んで法的に問題ありませんが、特殊車両は異なります。
この車検証の最大積載量はスペック的限界値であって、特殊車両通行許可で許可される最大重量はまた別なのです。

特殊車両通行許可証の最大積載量とは

特殊車両通行許可を携帯した状態で走行する際に、積載できる量の限界値です。
どの車両がどの経路を走るのかという要素が絡んだ上で許可された積載量です。

言い換えれば、車両と経路の組み合わせにより毎度、許可される最大積載量は変わります。
同じ車両でも、Aの現場とBの現場では許可証ごとに、最大積載量は変わります。

最大積載量で特殊車両通行許可がおりない理由

上記で、最大積載量の意味の違いを説明しました。
なぜ、特殊車両通行許可となると、車検証にのっている最大積載量で許可がおりないのか、理由は大きく分けて2つあります。

申請する車両と経路です。

車両が原因

特殊車両通行許可では「軸重」がひとつ重要なキーワードになります。

軸重とは、車軸1本にかかる重さのことで、荷物を積載した状態で軸重は10tを超えてはいけない決まりがあります。
これをクリアするために、超重量物の輸送には多軸車が使われたりします。(車軸が多ければ多いほど、一本あたりの車軸にかかる重さは分散されますから)

軸重が10tを超えた状態で申請しますと書類不備で受理されませんので、実務上、この問題をクリアするためには、車両を変えるか、積載量を減らして申請します。
軸重にかかる重さを決める要因としては、積載量のほかに、軸どうしの距離や軸の数も関係します。

経路が原因

申請した経路によっては許可される重量は変わってきます。
細い道路、幹線道路、道路によっては許可限度値が存在します。

例えば、本州と北九州市を結ぶ関門橋は許可限度重量が35tです。
最大まで積載して車両総重量が42tなら、この経路では許可はおりません。

経路を変えるか、積載量を減らして車両総重量を35t以下にして、申請することになります。

許可はおりるけど戦略的に減トンする場合とは

最大積載量で申請しても許可はおりるが、あえて減トンして申請する場合があります。
それは、許可に付される通行条件をゆるくしたいときです。

特殊車両通行許可とは、「特殊車両は原則通行禁止だけど例外的に条件付きで許可するよ」という趣旨です。
許可を得れば、無条件に走れるわけではなく、ほとんどの場合、なんらかの条件が付きます。

そのような条件が減トンによって回避できる場合は、あえて戦略的に減トンします。

例えば、ある橋梁で、「通行は夜間限定」の条件が付くとします。
※夜間限定の通行は21:00~06:00です。

要は車両が重すぎて橋に負担がかかるから夜間のような交通量の少ない時間帯なら通行を許可しますよという趣旨なわけですから、
減トンすることによって、この条件をはずして、24時間通行できるようにするのです。

余談ですが、夜間限定の通行は、運行に対して与える影響が大きいですから、やむを得ず減トンしてでも24時間通行できるようにしておきたい事業者も多いです。
弊所では、お客様にとってなるべく有利な許可証となるように、必要に応じてご提案、ご相談した上で申請しています。

減トンするかどうかは悩ましい

実際、この点は事業者様にとって非常に悩まれるテーマです。
減トンの程度は1tから10t近くまで場合によりけりです。


減トンしない場合とする場合で、簡単に比較しますと、

・減トンしないで夜間限定条件付き(21:00~06:00)
めいいっぱい荷物を積めますから輸送効率としては優れています。
ただ、走行は夜間限定ですからドライバーや荷降ろし先やいろいろと考慮することが増えますから、使い勝手のよくないトラックとなる可能性もあります。

他方で、

・減トンして24時間通行OK
時間帯の制限はありませんから朝でも夜でも関係なく走れます。
ただ、一度に積める荷物は減ってしまいますから、輸送効率は劣ります。
一回きりで済むような積荷なら影響は少ないですが、何度も往復する予定なら、運行回数を増やさなければなりませんので、ドライバーの稼働時間は増え、燃料も余計にかかるでしょう。

この点は、お客様とやり取りさせていただいていると、判断は実に様々です。
即答で減トンしてでも24時間通行を優先される事業者様がおられる他方で、
社内で検討の上で数日後にお返事いただき、夜間限定条件付きでも最大積載できることを優先される事業者様もおられます。

事業者様によって、運行の体制や状況も様々ですから、どちらが正解とかおすすめということはなく、事業者様各々によって有利な方を判断すべきでしょう。

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過積載が発覚したら?違反点数・罰則・罰金・免停などのリスクは?

記事全体のまとめ

この記事では、特殊車両通行許可で車検証に記載の最大積載量が積めない理由について、解説しました。

結論は、

・最大積載量は積めない理由
特殊車両通行許可における最大積載量は、車両と経路によって許可ごとに決まるものであり、車両スペック的な意味での最大積載量とは異なるため。
車検証に記載の最大積載量と、特殊車両が道路を走るときの許可された最大積載量は、別なのです。
車両や経路が変われば、最大積載量は変わるため、許可ごとに(A現場とB現場では)最大積載量は異なります。

・最大積載量で許可はおりるけど戦略的に減トンする理由
特殊車両通行許可に付された通行条件をゆるくするため。
重量が原因で夜間限定通行の条件が付いた場合は、減トンすることで条件をはずして24時間通行できるようするなど。

特殊車両通行許可の申請は、企業が特殊車両を安全かつ効率的に運行するために必要な手続きですが、非常に複雑で手間のかかる手続きです。

道路法、車両制限令、道路交通法などの法令知識が必要な上、実務処理や役所対応のノウハウも求められます。
さらに、法令や制度は常に変わるため、その都度対応が必要です。

行政書士に特殊車両通行許可申請を任せることで、通行許可の取得後も専門的な視点から相談に乗ることができます。
特殊車両通行許可に関することでお困りの方は、専門家である行政書士にご相談ください。

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